歌から道元禅師をよみとく(5)
5.本来の面目を詠ず
「春は花夏ほととぎす・・・」の和歌の詞書にあった、「本来の面目を詠ず」とはどういうことでしょうか。
日本に帰ったばかりの道元禅師は最初に『普勧坐禅儀』を著しました。その中に、
『自然に身心脱落して、本来の面目現前せん』
座禅会の最後に皆で唱和するお馴染みの文です。
これは、自然の中に入って親しみましょう、そうすれば自分がはっきりしますよと言うことではなく、自然はじねんと読み、そのままの様子を指します。
禅宗では、「不立文字」と言い、言葉によらずに真意を伝えます。
ところが、文字を見るとそれを読み、解釈しようとして、とんでもない方向に行ってしまうことがあります。
また、現代でも使われている言葉が、著作当時と異なる場合もあります。悟りを開かれた方の言葉を一般の方々が何とか理解しようとしますが、及ばないことも多々あるのです。
次回は、道元が「自然」をどうとらえていたかを和歌から近づいて参りましょう。