藤原佐理書状(7)離洛状を臨書して

7.何等事
釈文:「就中殿下何等事」

鑑賞:「何等事」は潤筆の箇所であるが、重さを全く感じさせない。*「筆勢の強さや切れ味に整斉の美を超えた美しさがある。」

その重いきりの良い運筆とともに細やかな動きが相まって、感動の余韻にひたることができる。それは筆者の美への意識はもちろんのこと、書き方に特徴があるのではないか、と榎倉香邨氏は指摘する。

「手に持った紙を傾斜させ、揺れる紙面を懸腕の筆がほぼ直角に捉え、食い込む角度で書いたのでしょう。」

参考文献:古筆に学ぶ 榎倉香邨著 二玄社