藤原鎌足の贈答歌(6)金沢本万葉集を臨書して

6.やすみこを得たり
選字は「わ禮者もやヽすこをえ多利み那ひとの え可て二すといふやすこをえ多梨」

歌意は「私はまあ安(見)児をえた。皆人は得ることが難しいといわれる安(見)児を。」

鑑賞:この歌は直い歌である。『万葉集』は全体的に直叙的な表現が多い用いられている。『古今集』では推量や可能などの助動詞を用いて婉曲に表す場合が多いが、『万葉集』では終止形で終る歌が多い。

この歌は二句切れであり、「得たり」と二度言い切っている点に特色がある。「桜田へ田鶴鳴き渡るあゆち潟しほひにけらし田鶴鳴きわたる」も同様である。

参考文献:万葉秀歌(一)久松潜一著 講談社学術文庫