天皇と鏡王女との相聞歌(2)金沢本を臨書して


2.妹の家も
釈文:「妹が家も継ぎて見ましを大和なる大島の嶺に家もあらましを」

選字は「いも可いへも月てみましをやまとなる 於ほしまみね爾いへもあら満しを」

語釈:「継ぎて見ましを」の「まし」は願望の意味を含む推量の助動詞である。「見ましを」は願いはあるが、実現が不可能の意味になる。

歌意は「妹の家もひきつづいて見たいがそれもできない。それで大和の大島の峰のほとりに私の家があればよいのに。」

鑑賞:「見ましを」と「あらましを」とあるので、願望がありながら、そうできない、いらだちを強める表現である。

参考文献:万葉秀歌(一) 久松潜一著 講談社学術文庫