万葉集の相聞歌(10)金沢本を臨書して

10.秋の田の
釈文:「秋田之 穂上爾霧相 朝霞 何時邉乃方二 我戀将息」

書き下し文は「秋田之(あきのたの)穂上爾霧相(ほのへにきらふ)何時邉乃方二(いづへのかたに)我戀将息(わがこひやまむ)」

語釈:「穂の上に霧らふ」実った稲穂の上に霧のようにかかっている。「霧らふ」は霧のようにかかるの意。「霧」は名詞の他に動詞として「霧ら」「霧る」とも活用した。

現在、霧は春に使い、秋にはいわないが当時、春にも秋にも用いられた。「何時邉乃方二(いづへのかたに)」霧がどちらの方へか、かすんでゆくように、わが恋がどこへゆくのかとを掛けている。

参考文献:万葉秀歌(一) 久松潜一著 講談社学術文庫