古を訪ねて万葉集の相聞歌(7)金沢本を臨書して

7.高い山の
釈文:「かくばかり戀ひつつあらずは高山の 磐根しまきて死なましものを」

選字は「可久者可利こひつヽあらすは多可やまの い者ねしま支て志那ましものを」

歌意は「このように恋いしたってばかりよりは、高い山の磐を枕にして死にたいものだ。」

語釈:「戀ひつつあらずば」は、本居宣長『詞の玉緒』以降、「あるよりは」と解釈していた。しかし橋本進吉氏による「ずは」の研究により、「戀ひつつあらず、さうして」と解され、定説化した。

「岩根しまきて」岩を枕にしての意味。「死なましものを」死にたいものである。

参考文献:万葉秀歌(一) 久松潜一著 講談社学術文庫