のどやかに降る雨(5)和泉式部日記から
5.わたしの涙が
釈文:「落つる涙は雨とこそ降れ 御気色の例よりもうかびたることどもをのたまはせて、明けぬれば、おはしましぬ。」
選字は「落つ流奈み多盤あ免と故曽降れ 御気色の例より毛うか飛多流ことヽ裳を 乃堂万はせ天明希ぬ連八於盤志ましぬ」
鑑賞:女の歎きの「涙」を屋外で降っている「雨」に見立てることで、悲しみが客観化されて、女の心がやわらいでいく。宮の前歌に呼応した連歌形式となっているが、歌集では一首の短歌となる。
歌意は「わたしの流した涙が、雨となって降ったのでしょう。軽いお気持ちでおっしゃったお言葉がわたしの身はこたえたのです。」
参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫
和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社
