さゆる夜・宮が出家か(1)和泉式部日記より

1.冴え冴えとした冬に
釈文:つねよりも霜のいと白きに、『いかが見る』とのたまはせたれば、『さゆる夜の数かく鴫はわれなれや いくあさしもをおきて見つらん』」

選字は「つ年より毛霜のいと白支に意可ヽ見流と能堂 よ盤せ多れ者 佐ゆる夜乃数可久しき者王禮奈連 やい具阿さ志裳越お支傳見つら無」

鑑賞:「暁の鴫の羽がき百羽がき君が来ぬ夜はわれぞ数かく」『古今集 恋五 読み人知らず』をふまえる。その意は寒さのために鴫は羽をしきりにかくというが、わたしも君の来られない夜は寂しさに身もだえする。

歌意は「冴え冴えとした冬の夜に寒さに羽根をかく鴫は差し詰め私のようです。これまで何日も起きたまま霜が降りた朝を見たことでしょうか。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社