荻の葉擦れの音を(2)和泉式部日記を書いて

2.霜枯れのわびしさ
釈文:「おぼしやらぬなめりかし、と思ひて、暮れつ方、きこゆ。『霜がれはわびしかりけりあき風の ふくにはをぎのおとづれもしき』」

選字は「おと越於本しやらぬ奈免里可志 登思ひて暮れつ方支ら遊 し裳可禮者わ飛志可り遣里阿支風の 吹久耳盤越支農於とつれ毛し支」

鑑賞:女は宮さまが自分の境遇を思いやってはくださらないのだと思っていた。「暮れつ方」宮のおとづれがないことを確かめて。「霜枯れ」を「離れ」を「秋風」の「秋」を「飽き」を、「おとづれ」の「おと」に「音」を「訪づれ」をかけた。

歌意は「霜にあたり枯れてしまった荻の葉の景色は実にわびしいものです。たとえ秋風でも吹いている時には、荻の葉ずれの音がしたように、宮さまがいらしたときは、よかったです。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社