葛城山の岩橋によせて(3)和泉式部日記から

3.霊験あらたかなれば
釈文:「わりなくこそ思ひたまうらるれときこえたれば、たちかへり、『行ひのしるしもあらば葛城の明日なしとてさてややみなん』」

選字は「王利難久こそ思ひ多万う羅る連ときこ盈多れ盤多地可へ里 於こ奈比農し流志もあら八葛城の 者し多難事と弖さ傳やヽみ奈无」

鑑賞:和泉式部は謙遜して、自らを葛城の一言主神(ひとことぬしのかみ)になぞらえた。当時は夜間の逢瀬が一般的で、日昼に会うことはまれであったため、作者は気が引けて詠んだ歌に宮が行者の気持ちで返した歌である。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社