智永千字文を鑑賞・臨書して(8)草書を楽しむ

8.左旋回の筆法
左旋回の筆法は右旋回に比べて、その数が少ないとはいえ一定の法則がある。ただ右手で執筆していることから、左旋回は書きにくく難しい。

運筆は直線が速く曲線の部分は遅いので、曲がるところが難しい。特に左旋回の曲がるところは、線が渋滞して冴えにくい。

ところが、智永の草書は、線にねばりがあり、ゆったりとしながら、線の張力と遅筆といった相反する指向が融合されて表されている。

参考文献:智永千字文 近藤摂南編 二玄社