王羲之書法と中国書の源(1)集字聖教序から

1.書の源流
書は、中国古代の漢字から始まった。現在残る最古の漢字は殷代の甲骨文である。天に未来の吉凶を判断する神意を問う卜(うらな)いに用いられた。

甲骨文は亀甲や獣骨の上に刻されているが、朱または墨で下書きがされている。その時は、甲骨を左手に、筆を右手に持ち、筆を直角に立てて書いたと思われる。

これは、木簡や竹簡に書く時代になっても同じであり、紙が普及した後も、紙を左手に持って書いたようだ。

さらに、紙を机の上で書くようになってからも、腕を上げる懸腕や人差し指を挙げて書く工夫をして筆を直角に当てて書いた。中国では元来、直筆・正鋒で書くことが主流であったが、王羲之はそれとは異なる書法を用いた。

参考文献:書の語られ方 中国篇 松村茂樹著 日本経済評論社