霜白き朝に童が遅れて「手枕の袖」を想い出し(4)和泉式部日記より
4.手枕の袖はどうしたの
釈文:「『手枕の袖は、忘れ給ひにけるなめりかし』とあれば、『人知れず心にかけてしのぶるを 忘るとや思ふ手枕の袖』」
選字は「手枕の袖者わ須連多まひ爾希る那免里可志と『ひと志れ春こヽ路耳可希てし能ふる越 忘流とやおも婦手枕の處傳』」
鑑賞:「手枕の袖は、忘れ給ひにけるなめりかし」女が前の歌に「手枕の袖」を詠み込まなかったので、それを指摘して、童の遅参による贈答歌の遅れを挽回しようとしたか。
歌意は「他の人にはわからないように、自分の心の中であなたのことを思っております。こういう私が、どうして「手枕の袖」を忘れることができるでしょう。」「しのぶ」を「偲び」と解釈して切り返した女である。
参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社