行書般若心経-無無明亦(2)集字聖教序より

3.無老死
釈文:「乃至無老死 亦無老死盡」
書き下し文は「乃至、老死も無く、また老死の尽くることも無く」

鑑賞:人間にとって老いは避けがたく、若い日を懐かしむことが常である。老いや若さといったものは相対的なもので、それをそのように呼べば、固定化してしまう。

死にしても生と対にとらえると、かたまってしまうが、常に変わり続ける一瞬に過ぎない。曹洞宗の開祖道元禅師は「生も一時のくらゐなり、死も一時のくらゐなり。たとへば冬と春のごとし」(『正法眼蔵』現成公案)という。

老死が無いといえば、それにとらわれることがあるが、定まったものではないのだから、執着することを離れることである。

参考文献:般若心経講和 鎌田茂雄著 講談社学術文庫