行書般若心経(2)集字聖教序より
2.般若とは
「般若波羅蜜多心経」というタイトルの「般若」から始めることにしよう。
鑑賞:「般若」は怖い顔をした「般若の面」を思い浮かべ方もいるだろう。元来、この言葉はインドの語を音に写したもので、サンスクリット語で言えばプラジュニャー、パーリ語ではパンニャーである。
これを翻訳すると、「智慧」となる。智慧がすなわち般若である。ただ、単に智慧と訳したのでは、本来の持ち味を出すことができない。仏教では、われわれ人の知慧を仏の知慧と分けて「識」を呼ぶ。知識や意識などである。
その「識」とは物の道理をわきまえず、悩み、悶えて煩悩が出てくることで、つまりは迷いである。迷いを転じて悟りを開くことが般若の智慧である。
和泉式部日記にも「明けぬ夜の心地」と迷いの闇を表している。
参考文献:般若心経講義 高神覚昇著 角川文庫