手枕の袖・陰暦十月に(4)和泉式部日記から

4.なにか無性に
釈文:「とのたまへど、よろづにもののみわりなくおぼえて、御いらへすべき心地もせねば、ものもきこえで、ただ月影に涙落つるを、あはれとご覧じて、『などいらへもし給はぬ」

選字は「と能多万遍登よ路つ爾ものみ王りな久 お本え亭御意ら邉須へ支心地もせ年八裳の 毛き許盈弖多ヽ月影耳涙のお徒る越あ者 禮と御覧してなといら遍毛志多万はぬ」

鑑賞:「もののみわりなくおぼえて」何となく無性に悲しくて。「ものもきこえで」物も聞こえず。

大意は「宮様がお歌を寄こしたけれど、女は無性に悲しくてお返事をしようという気持ちになれず、物も聞こえず、ただ月の光に涙をこぼしていた。

宮はしみじみと感じいられ、『どうして、お返事もなさらないのですか」

宮と女の心の機微が描かれる場面。いつもは丁々発止と歌の贈答を重ねてきた女がただ月の光に涙ぐむ。

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫