手枕の袖・陰暦十月に(2)和泉式部日記から

2.そこはかとなく寒く
釈文:「わざとあはれなることの限りをつくり出でたるやうなるに、思ひ乱るる心地は、いとそぞろ寒さに、宮も御覧じて、人の便なげにのみ言ふを、あやしきわざかな、ここにかくてあるよ、などおぼす。」

選字は「王佐とあ者 連なるこ登能可支越つ久利伊天多流やう奈 流耳思ひえ多るヽ心地者いと所ヽろ佐無き爾宮毛 御覧して人農便奈介に乃美言布越あや し支わ佐可奈古ヽに可久亭阿るよ那とヽお本春」

鑑賞:「わざと」ことさら。周りの情景までが、みやのことばに応じたかのように。「そぞろ寒さ」なんとなく寒さを感覚えるほど。「ここにかくてあるよ」ここにこうしているよ。目の前の女の様子に宮が心を動かされたことをいう。

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫