あかつき起きの文に五首贈答歌その一(7)

7.雁のかすかな鳴き声
釈文:「名残りなううらめしう思ひふしたるほどに、かりのはつかにうちなきたる、人はかくしもや思はざるらん、いみじうたへがたき心地して」

選字は「名残利奈 うヽ羅免しう思ひふし多流本と耳か里 能者つ可にうち那支多る人盤可九し毛や 思はさる羅無意みしう多遍可堂支心地 し弖」

鑑賞:「名残りなう恨めしう」は「余すところなく」「すっかり」の意味。ひどく恨めしく。「かりのはつかにうちなきたる」は雁がかすかに鳴いたのは。『いみじうたへがたき』にかかる。

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫