逢坂の関を越えてたづねてきた人は(6)和泉式部日記から

6.山に籠っていて
釈文:「いつか、とのたまはせたるは、おぼろけに思ひたまへいりにしかは。『山ながらうくはうくとも都へは いつか打出の浜は見るべき』ときこえたれば」

選字は「伊つ可登の多満せ堂る盤於本ろ希二 思比多ま邊い利爾しか盤 『那可ら有供者う九とも都へ盤 つ可う千出能浜者見流遍き』と支こ盈多れ者」

鑑賞:「打出の浜」は石山から京都に帰る途中にある。「おぼろげに」は、おぼろげならずの意。いい加減な気持ちで石山寺へこもったわけではない。

歌意は「山に籠ったまま、つらいことがおこっても、いつの日か山を出て都へ帰ろうとすることがあるでしょうか。」

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫