秋の寝覚め、夕べの訪問(11)和泉式部日記より

11.お便りがなくて
釈文:「『くれぐれと秋の日ごろのふるままに 思ひしらねぬあやしかりしも むべ人は』ときこえたり。」

選字は「九連倶れとあ支能日こ露農布流まヽ二 於も飛し羅連ぬ阿や志可里し毛 无へひと盤ときこ盈多里」

鑑賞:「秋」に「飽き」をかける。「むべ人は」『拾遺集』雑秋、大中臣能宜「かへりにし雁ぞなくなるむべ人はうき世の中をそむきかぬらむ」の第三句を引くとする説がある。「むべ」はなるほど、の意。

歌意は「お便りがなく、暗い気持ちで毎日を送っておりました。わかりかねていた宮さまのお心がようやく思い当たりました。」

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫