秋の寝覚め、夕べの訪問(10)和泉式部日記より

10.せんかたなく
釈文:「せんかたなく、なにとなきことなどのたまはせて、帰らせ給ひぬ。そののち、日ごろになりぬるに、いとおぼつかなきまで、音もし給はねば」

選字は「勢无可堂那久奈耳とな支こと 那と農た万盤せ弖帰らせ給日ぬ 所農ヽ地日ころ爾那利ぬるに意度おほつ 可難支ま亭音もし給盤年八」

鑑賞:「せんかたなく」しかたが無く。連用中止法といい、以下の主語が「宮」に変わる構文。

大意は「しかたが無く、宮はなにということもないことをお話になり、帰られた。その後、日数が過ぎて、たいそう不安な気持ちになるほど、お手紙もないので」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社