夜離れのわけと遠ざかる舟(6)和泉式部日記から
6.ひたすら塩を焼いて
釈文:「袖のうらにただわがやくと しほたれて船流したるあまとこそなれ ときこえさせつ」
選字は「袖のう羅耳王可や久登しほ多連て ふ年那可志多流あ万と許所奈れ ときこえ佐せつ」
鑑賞:「うら」に「裏」と「浦」、「やく」に「役」と「焼く」をかけ、「塩」「舟」「渡す」「海人」の縁語とした。「袖の浦」は出羽国の歌枕。
歌意は「袖の浦で私の役目として塩を焼いて潮に濡れている間に、舟を流した海人となってしまいました。これが役目と袖を涙でぬらしている間に、あなたに見捨てられ寄るべない身をなったことです。」
参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社 和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫
