そのまま南院にとどまりて(5)

5.朝露のおく

釈文:「苦しかりけり』とあれば、
朝露のおくる思ひにくらべれば ただに帰らんよひはまされり」

選字は「朝露のお倶る思ひに比羅布連八 多ヽ耳可邊ら无宵者満され里」

鑑賞:「おくる」は「起くる」に、「露」の縁語「置く」をかけている。

歌意は「朝露のおく明け方に起きて別れる苦しさに比べれば、逢うことができずに空しく帰る宵のつらさの方がまさっている。」

参考文献:和泉式部日記 清水文雄校注 岩波文庫