そのまま南院にとどまりて(1)

1.人のいない場所で

釈文:「『さりや、人もなき所ぞかし。今よりは、かやうにてをきこえん。人などのあるをりにや、と思へば、つつましう』など」

選字は「佐里や人裳那支所曽かし今よ理者可 やう爾傳をき故え无飛と難と農あ流乎利 耳やと思倍者徒ヽましうな登」

鑑賞:「さりや」どうですか、と宮は女を気遣っている。

「人などのあるをりにや」あなたの家に行けば、誰かと鉢合わせしてしまうかもしれないと思って。宮はこの尋常でない逢瀬に至った理由を、女のもとへ通う男たちのせいにしているが、実は乳母の忠告を意識したものである。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一訳注 新潮社