初めての南院へ人のいない廊へ(5)

5.人なき細殿へ

釈文:「やをら人もなき廊にさし寄せて、下りさせ給ひぬ。月もいとあかければ、『下りね』としひてのたまへば、あさましきやうにて下りぬ。」

選字は「やをらひとも奈き廊爾 さ事寄せて下り佐せ給飛ぬ月毛いとあ可希連八 下りねとし比ての多満へ者あ佐ま志支やう爾て 下りぬ」

鑑賞:「廊」建物と建物をつなぐ建造物。細殿。現代の廊下とは異なり、部屋がある。ここは師宮の邸(東三条院南院、一説に冷泉院南院)の中。

大意は、宮が人のいない室へ女を下りさせた、月も明るかったので、はらはらした思いでやっと下りた。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一訳注 新潮社