夏を涼みつつ朗詠したい詩歌を(10)和漢朗詠集より

10.清水をすくいあげて

釈文:「松かげの岩井の水をむすびつヽ 夏なきとしと思ひけるかな」恵慶

選字は「ま徒可介のい者ゐ能み徒をむすひつヽ なつ那支とし東お无ひ介る可那」

鑑賞:「岩井」岩石を井筒にたたみ湧き出す泉を囲んだ井。『拾遺集』『拾遺抄』夏に「河原院のいづみのもとにてすヽみ侍りけるに、恵慶法師 松かげのいはゐの水をむすびあげて夏なき年と思ひけるかな」として出る。

現代語にすると「松の木かげに湧く岩井のしみずをすくい上げるたび、あまりの冷たさに、今年は夏のない年なのかなと思う。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫