夏を涼みつつ朗詠したい詩歌を(1)和漢朗詠集から
1.名残の雨滴は
釈文:「青苔地上銷残雨 緑樹陰前逐晩涼」白
書き下し文は「青苔の地上に残雨を銷(け)す 緑樹の陰の前に晩涼を逐(お)ふ」
鑑賞:『白氏文集』「池の上に涼を逐ふ」詩。『文集』は「残雨」を「残暑」に作る。『拾玉集』にこの句を題として「苔の上にはれ行く雨の岩陰に風こそ過ぐれ夕暮れの空」と詠んだ。
藤原定家は同じ題で「夕立の名残りの露をそめすてて苔のみどりに暮るる山かげ」(『拾遺愚草』)と詠む。
現代語にすると「青やかな苔に先ほどまで見えた、夕立の名残りの雨滴はもう消え去った。雨あがりのすがすがしい微風を感じ、緑濃い木陰のほとりで夕涼みをする。」
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫