初夏に薔薇ひらき、酒初めて熟す(1)和漢朗詠集から

1.昨年の冬から醸した

釈文:首夏「甕頭竹葉経春熟 階底薔薇入夏開」
書き下し文は首夏「甕の頭の竹葉は春を経て熟す 階の底の薔薇は夏に入って開く」

鑑賞:首夏は初夏のこと。『白氏文集』「薔薇正に開く、春酒初めて熟す」詩。昔から愛誦された初夏の名句。

『源氏物語』賢木巻にも「今日も例の人々多く召して文など作らせ給ふ、はしのもとのさうび気色ばかりさきて、春秋の花盛りよりもしめやかにおかしきほどなる程に、うちとけ遊び給ふ」とある。

現代語にすると「去年の冬から醸造した甕の中の酒は、春を経て熟成した。階のもとの薔薇も初夏になったので花が開く。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫