心がはるか遠い境地にある(1)陶淵明・飲酒二十首其五より

1.世俗の人が住む

釈文:「結盧在人境 而無車馬喧」 王穀祥書 祥香臨
書き下し文は「盧を結んで人境に在り 而も喧しきこと無し」

鑑賞:詩形は五言古詩。押韻は喧、偏、山、還、言
「結盧」粗末な家をかまえる。「人境」俗人が住んでいる町の中。当時の隠者の多くは人里離れた山奥に住んでいた。

「而」それでいて、それなのに。逆説の用法。「車馬喧」訪れてくる車馬の騒がしさ。車馬は官吏の乗り物で、官吏の訪れをさす。

現代語にすると「世俗に人が住む町の中に盧を構える。それなのに、訪れる役人の娑婆の騒がしさはない。」

参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社