人生を心ゆくまで味わう(1)陶淵明・飲酒二十首其一から

1.陶淵明とは

 陶淵明は、西暦356年に生まれ427年に亡くなったとされる。東晋、現在の江西省九江市の人。字は淵明。一説には淵明を本名、字を元亮とする。自らは家のそばにあった5本の柳の木にちなんで「五柳先生」と名乗ったりしたようである。

 曽祖父が東晋の優れた武将、陶侃であり、父は太守をした家柄だったが、若くして父を失い大変な苦労をした。二十九歳の時には初めて士官をするものの、程なく辞任する。以後士官と辞任を繰り返し四十一歳の時に彭沢県の県令、現在の知事になるが、八十日余りでその職を辞してしまう。

 その時の心境を述べた『帰去来の辞』は有名である。
参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社