有明の月、雲までも平通宗を思い出し(6)
6.ただもう例のないこと

釈文:「思ひいづる ことのみぞただ ためしなき なべてはかなき ことを聞くにも」
選字は「思比い徒ること能美多ヽた免し奈支 難へ弖者か那支こ登越き久に裳」
鑑賞:定命で亡くなることは、寿命と諦めもつくけれど、作者が体験しことは他に類例がないことで、あたかも夢の中の出来事のようだという、心情が表れる。
歌意は「私の思い出すことは、ただもう類例のない哀れなことであることよ。寿命による世間の人の死を耳にするにつけても。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社