父君を亡くされた平親長と贈答歌を(6)建礼門院右京大夫集より

6.おつらそうに

釈文:「わびしらに 猿(ましら)だになく 夜の雨に 人の心を 思ひにこそやれ」

選字は「王飛しらに猿多二那久夜の雨爾 ひと農こヽ楼をおも日許所や連」

鑑賞:「わびしらに」の「ら」は接尾語。つらそうに、心が傷み悲しんでいるように。『古今集』凡河内躬恒の「わびしらにましらな嘆きそあしひきの山の峡(かひ)ある今日にやはあらぬ」によった歌である。

現代語にすると「わびしそうに猿までもなく夜の雨に、父君を亡くされたあなたは、さぞお嘆きのことかとお察ししております。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社