今年が最後の七夕の歌かと思ひ(1)建礼門院右京大夫集より
1.梶の葉に書きつけると
釈文:「書きつけば なほもつつまし 思ひなげく 心のうちを 星よ知らなむ」
選字は「か支徒希者難本もつヽまし思ひ 那遣久心農有地をほ志よ事ら奈無」
鑑賞:「か支徒希者」では全体に右寄りに膨らみながら、重心は左の前に置き安定を図っている。「難」で右へ意識を向けつつ、「つ」では左へ働きかけている。
終句の「ほ志よ事ら奈無」では「し」が二箇所重なり、一行目にも「し」があることから「志」と「事」に字を選び変化をつけている。
歌意は「つらい思いを梶の葉に書きつけると、どうしても気恥ずかしく感じられる。なげく思いの私の心のうちを推し量っておくれ。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社