はかない契りを嘆いても(1)建礼門院右京大夫集から

1.やむをえないこと

釈文:「よしかさじ かかるうき身の 衣手は たなばたつめに 忌まれもぞする」

選字は「よし可佐志可ヽ流有支身農衣て八 多那者堂つ免耳いまれ曽寸る」

鑑賞:「よし」しかたないが、そうしておこう、の意味の副詞。「衣手」は袖のこと、着物のこと。一行目の「よし」の疎に対して二行目は「多那者堂」と変体かなでたたみかけて密になっている。

歌意は「しかたがないけれど、貸さないこととしよう。私のように数多くつらい目にあっている着物では、織女に嫌われるかもしれないから。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社