七枚の梶の葉に書いても(5)建礼門院右京大夫集より
5.袖を重ねていても
釈文:「かさねても なほや露けき ほどもなく 袖わかるべき 天の羽衣」
選字は「可佐年ても難本や露希きほと毛 な具袖わ可流へ支天の羽衣」
鑑賞:変体かなを用いる場合でも漢字との調和は大切である。ここでは「露」「袖」「天の羽衣」といった見れば意味がわかる漢字を要所に配し読みやすくしている。ただ「露」は変体かなとして「ろ」と読むことがあるので注意が必要である。
歌意は「袖を重ねても、やはり涙で露がしたたり落ちたように濡れているだろうか。もうすぐに袖をわかって彦星と別れなければならない織女の羽衣は。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社