七夕の日にちなみ五十一首を(3)建礼門院右京大夫集から
3.鐘の音も
釈文:「鐘の音も 八聲の鳥も こころあらば
こよひばかりは 物忘れなれ」
選字は「鐘の音も八聲乃鳥裳こヽ楼あら八 こ夜ひ者可梨はも能王春れ奈連」
鑑賞:「鐘の音」は時を告げる鐘の音。「八聲の鳥」は明け方に何度も鳴く鶏。
歌意は「夜明けを告げる寺の鐘の音も、何度も明け方に鳴く鶏も、人間らしい気持ちがあるならば、今宵だけは時を忘れておくれ。牽牛と織姫が年に一度だけ会う日だから。」
参考文献:建礼門院右京大夫大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社