弥生の頃、資盛の命日に(1)建礼門院右京大夫集から
1.あっけなく資盛を亡くして
釈文:「弥生の廿日余りの頃、はかなかりし人の水の泡となりける日なれば、れいの心ひとつに、とかく思ひいとなむにも、我がなかからむのち、たれかこれほども思ひやらむ。」
選字は、「弥生の廿日余り乃頃は可奈か里し
人農水の泡と奈利希る日難連
者禮いの心飛と徒二登可供思ひ以と
那無爾も王か奈可羅農ちた連可
これ本と毛於も日やらむ」
鑑賞:「水の泡となりける日」資盛が壇ノ浦で水の底に消えた日。
「たれかこれほども思ひやらむ」自分が亡くなった後に、誰がこんなにも気を配ってくれるだろうか。
資盛の後世を弔う人はいるだろうか、と自問する作者である。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社