谷川は木の葉も氷に閉じこめて(3)建礼門院右京大夫集より

3.入江の氷は

建礼門院右京大夫集 祥香書

しばらく滞在した宿を出て、京都へ向かう途中に
釈文:「まだ夜をこめて都のうちへ出づる、道は志賀の浦なる
    に、入江に氷しつつ、よせくる波のかへらぬ心地して、
    薄雪つもりて、見渡したれば白妙なり。」

選字は、「ま多夜越こ免て都のう遅倍出つる道八
     志賀の浦奈るに入江爾氷しつヽよ勢久る
 
     波の可遍らぬ心ちして薄雪つも里て
     見渡し多れ者白妙奈利」

大意は、「まだ夜が明けないうちに宿を出ました。都へ向う道は
     琵琶湖の岸の入江に氷が張っていましたが、寄せてく
     る波は凍って沖へ帰らないように思われました。薄く
     雪が積もり、見渡すと一面に真っ白でした。」

鑑賞:「白妙」は樫の木の皮の繊維で織った布が白いことから、
    転じて白い色をいいます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社