谷川は木の葉も氷にとじこめて(1)建礼門院右京大夫集より

1.小さな谷川の氷は

建礼門院右京大夫集 祥香書

凍てつく冬を迎えて
釈文:「わづかなる谷川の氷はむせびながら、さすが心細き音は
    たえだえ聞ゆるに、思ふことのみありて」

選字は、「わ徒可奈類谷川農氷者む勢日奈可羅さ春
     可心細支おと盤多えヽヽ聞ゆる耳思布こ
     登の見あ里て」

大意は、「小さな谷川の氷は閉じ込められて咽び滞っているよう
     な響きでありながら、心細そうな音はとぎれとぎれに
     聞こえるので、思うことがあり」

鑑賞:「氷はむせび」は『和漢朗詠集』管弦や『新古今集』冬
   「かつ氷りかつはくだくる山川の岩間にむせぶあかつきの
    声」(藤原俊成)の影響を指摘する説があります。

 川の水が氷に閉じ込められた様子を、むせぶと表現することで
音が聞こえるようです。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社