晴れも曇りも定めがない空に(6)建礼門院右京大夫集を書いて
6.年の暮れになれば
釈文:「年の暮れなれば、みな枯野にて、吹きはらひたり。なに
となきなごりなき世のけしきも、思ひよそへらるること
おほし。」
選字は、「年の暮なれ者み奈枯野耳て婦
支波らひ多里那爾と難き奈こ梨奈支世乃希
志支毛思比よ曽遍ら類ヽこと於本し」
大意は、「年の暮れになれば、すべて枯野になり、荒涼と吹き払
われています。なんとなく跡かたもない世間の様子も
冬景色と思い比べられることが多いのです。」
鑑賞:「思ひよそへらるる」は、荒涼たる冬の自然と、跡かたも
ない人の世とを思いくらべるのでしょう。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社