ゆれ動く心を胸に抱きつつ(3)建礼門院右京大夫集より
3.鳴子の音も
橘の語りかけていた作者は、ふとある音に耳を傾けます。
釈文:「風にしたがひて鳴子の音のするも、すぞろに物がな
し。」
選字は、「風にし多可ひて鳴子の音能春るも須ヽろ耳
物可奈し」
大意は、「風が吹くにつれて、鳴子がなるのもわけもなく悲しい
ことです。」
鑑賞:「鳴子」田畑を荒らす鳥よけに用いる道具で、小さい板に
細い竹管を糸でかけ連ねたものを縄に張り、引くと音が
板に触れて出る仕組みのものです。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社