建礼門院を訪ねて歌を詠む(1)建礼門院右京大夫集から

1.今が夢か

建礼門院右京大夫集 祥香書

以前にお仕えしていた建礼門院を大原の里に訪ねて、墨染の尼僧姿となられた女院に拝し
涙にくれる作者が歌を詠みます。

釈文:「今や夢 昔や夢と まよはれて
    いかに思へど うつつとぞなき」

選字:「今や夢む可しや遊免とまよは連て
    以可耳於も遍とう徒ヽ度曽奈支」

歌意は、「今が夢なのでしょうか、それとも昔が夢だったのでしょうか。思い迷って
     どのように考えても現実とは思えないことです。」

鑑賞:この歌は『風雅集』に入集。在原業平の「忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや
   雪ふみわけて君を見むとは」の場が参考になります。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社