大原に建礼門院を訪ねて(2)建礼門院右京大夫集より

2.無常な世の中に

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「さだめなき 世とはいへども かくばかり
    憂きためしこそ またなかりけれ」

選字は「散多免無き世登者い遍とも可供者可里
    憂支堂めしこ處満多奈可梨介れ」

歌意は「無常な世の中というけれど、これほどまでにつらい思いをした例は
    これまでに、ないのではないでしょうか。」

鑑賞:「さだめなし」は移り変わりやすい。無常であるの意。無常の理念は特に鎌倉・
    室町時代の文芸に共通してみられます。この世のものは絶えず生滅(しょうめつ)
    変化していつまでも存在するものではなく、この世ははかないものだという考え。

    平安時代中期からの末法思想を背景に、戦乱が続いて精神・生活共に不安の大き
    かった中世の民衆間に広まり、無常感として時代の風潮となりました。①

 参考文献:①学研全訳古語辞典
      建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社