資盛を弔い源氏物語を思い出して(4)建礼門院右京大夫集を書く
4.一つも残さずに
「なにかと見ゆるが、かき返すやうにおぼゆれば、ひとつも残さず、みなさやうにしたた
むるに」
選字は、「那二かと見ゆ流可ヽ支返すやうにお本ゆ
連八比とつも残さ春み奈佐やうに志多
多む流爾」
大意は、「(あの時はこうだった)など、見えるものが、胸をかきむしられるようにつらく
思われるので、一つも残さずに写経などをしていると」
逡巡する作者の思いとは裏腹に、親しんできた源氏物語の場面が浮かんできます。この
ようなことが源氏物語にもありましたと、ふと心が文学に遊ぶのが次の回です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社