資盛亡き後、悲嘆に暮れながらも(3)建礼門院右京大夫集を書いて
3.それでも現に生きている私は
悲しみに暮れながらも、少しずつ現実に目を向け始める作者は、
「さても、げにながらふる世のならひ心憂く、明けぬくれぬとしつつ、さすがに
現し心もまじり、」
選字は、「さ傳毛希爾ならふ流世の奈ら比
心憂く明けぬ暮れぬとしつヽ佐寸可
耳現志もまし里」
大意は、「それでも、現に生きながらえる世の慣習が情けなく、明け暮れと日を過ご
しながら、それでも正気が戻ってきて」
つらい気持ちを抱えつつ、やはり現に生きていることに心が動き正気を取り戻し始め
る作者です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社