風がおびただしく吹く夢を見て(5)建礼門院右京大夫集を書いて
5.夢の中であの人は
夢の中の資盛は、
「つねに見しままの直衣姿にて、風のおびただしく吹く所に、いと物思はしげにうち眺めてあると見て、さわぐ心に覚めたる心ち、いふべきかたなし。」
選字は、「つ年二美しまヽの直
衣姿耳て風の於日多ヽ志久ふ九所爾
いと物思はし介爾う地奈か免てあ流と
見て佐わ久心爾沙め多る心ちいふ遍き可多
なし」
大意は、「(夢の中で資盛は)いつも見慣れた直衣姿で風が激しく吹く所に、たいへん物思いに沈んだ様子で一箇所を見ている。胸騒ぎがして目を覚ました時の気持ちは言葉では言い表せない。」
建礼門院右京大夫の詞書を読むだけでも胸が詰まる思いがするのに、書いてみると追体験をしているかのようです。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社