あの人はどこでこの月を眺めているのだろうか(1)建礼門院右京大夫集を書きながら
1.出家をすることも
建礼門院右京大夫は、京の都に戦乱の嵐が吹き荒れて、これまで親しくしていた公達たちが追われ西国へ落ちていく様子を目の当たりにします。最愛の恋人とはいつとは知らされないままに会うことができず、離れ離れになってしまいます。
一人残された作者は悲嘆にくれて仏に向かいながら出家をためらい、生きていくことさえ、つらく思えるのでした。
釈文「されど、げに命は限りあるのみにあらず、様かふることだにも心にまかせ
で、ひとり走り出でなんどは、えせぬままに、さてあらるるが心憂くて」
選字は、「されと希二命者か支りあ流の美爾
阿ら春様ふるこ登多耳毛心爾満可
せてひと利走利出て奈无と者江せぬ
万ヽに沙てあ羅るヽ可心憂久て」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社