會津八一の歌「くわんおんの」を書く(1)かな文字にて

1.くわんおんの

會津八一作 祥香書

會津八一は、歌人としても知られていますが、結社には属さずに活動を続けました。そして、和歌の表記はひらかなのみを用いて漢字は使いません。そのため、魅力的な歌が多い八一の歌を書作品とすることはそのままでは難しい面があります。

くわんおん の せ に そふ あし の
 ひともと の あさき みどり に はる 
 たつ らし も


明治41年、作者が28歳の作です。この歌は、法輪寺での作ということです。
歌意は、観音像の光背にそって一本の葦が立ち、淡い緑色がうっすらと見えた。それが今にも春がやってくるかのように思われた。

百済観音の光背を支える葦を彫った支柱から、いつか訪れる春を思い起こすという空間をまたいで広がる想像力とともに、仏像へのあたたかみが感じられます。

 参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編 笠間書院