逢坂の関を越えて(1)建礼門院右京大夫集を書いて
1.恋の関を越えて
何度もしつこく、言い寄ってくる隆信を相手にせず、はぐらかしてきた作者がついに断りきれなくなったのか、
「かようにて、何事もさてあらでかえすががへすくやしきことを思ひし頃、
越えぬれば くやしかりける 逢坂を
なにゆゑにかは 踏みはじめけむ」
選字は、「越えぬ連八久やしか里遣流あふ
佐可をな耳ゆゑにか者ふ三免介无」
歌意は、一度でも恋の関を越えてしまうと、これほどに悔やまれるのです。どうして、私は越えてしまったのでしょう。
歌の構成は、二行書にしましたが後半が少し詰まりました。一行目は疎密をつけて流れが感じられます。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社