隆信との歌のやりとり(4)建礼門院右京大夫集から

4.漂っていくだけよ

建礼門院右京大夫集 祥香書

誰か私の他に好きな人がいるのですかと問われた建礼門院右京大夫が返した歌です。
 「消えぬべき けぶりの末は 浦風に
  靡きもせずて ただよふものを」

選字が、「き盈ぬへ支けふ利能春衛者うら風
     爾難日支毛勢す弖多ヽ夜布ものを」

歌意は、消えそうな煙の先端は、風に靡くこともなく、漂っているのです。

作者の心細い心情が表れていて、隆信をつれなく無視するというふうでもありません。資盛からの便りもなく、少し気が弱くなっているのでしょうか。もう恋などしたくないという気持ちはあるものの、あなたにはわからないでしょう、と恋の歌のかけひきにも見えます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社